体は知っている。「もう食べなくていい時なんだ」
在宅介護、老人ホームのどちらの場合でも、人は最後の時が近づいてくると、食欲を失い、生命力がだんだんと無くなっていきます。
もしかして、この時すでに体は「もう食べなくていい時なんだ」と分かっているのかもしれません。
この時に最も大切なのは、食事を「食べるかどうか」ではなく、「食べる喜びを感じているかどうか」なのではないでしょうか?
食べられないから点滴で栄養を流し込むという場合もあると思いますが、点滴だけでは食べる喜びを感じることはできません。
それでは、今回は老人ホームでの看取り看護における食事の工夫を見ていきましょう。
食べやすいように工夫した食事
老人ホームで看取り看護を受ける高齢者の多くは噛む力が非常に弱くなっており、嚥下障害も重症化している場合が多いです。
そうすると老人ホームで提供している普通の食事ではむせたり、飲みこめない場合が多いので食事自体を変える必要があります。
ですから、老人ホームでは口に入れるもの全てにとろみをつけたり、噛まなくても飲みこめるように、食事をムース状にして提供するなど様々な工夫がなされます。
またすりおろしのフルーツや、ゼリーなどの喉ごしが良い食事が求められます。
噛めないということは体内の消化吸収能力も低下している可能性が高いので、消化が早いものを食べさせることも重要です。
とにかく老人ホームでの食事を少しでも楽しいと思って貰う事が重要なのです。
味わう喜びを感じられるような食事を
老人ホームで暮らす高齢者の容態も人それぞれで、食欲が全くない人もいれば、腸閉そくなどにより食べたくても食べられない人がいます。
老人ホームに暮らす全ての高齢者に食事を楽しんで貰うためには、一人ひとりにあった食事のあり方が求められます。
老人ホームではシャーベットのように飲みこみやすく、口当たりのよいものを提供したり、腸閉そくにより飲みこめない場合は、食事を口の中で味わってそのまま出すという事をすると食事の楽しさを思い出してくれると言います。
胃ろう持ちの患者であれば、水分は摂っても問題ないので、味噌汁やスープを味わうことが出来るでしょう。
「食べる」という行為には、単に栄養補給するという意味以上に「食べる喜び」や「味わう楽しみ」というものが感じられるという意味が大きいです。
食べることが楽しいと、生きることも楽しくなります。
ですから食欲がないからといって「元気がなくなるから食べないといけない」と無理やり食べさせるのではなく、その人が食べる楽しみを見つけられるような食べ方を老人ホーム側から提案する必要があるのです。